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セミドライ加工が得意な加工と被削材

セミドライ加工は切削加工の環境対応としてまず切削時の潤滑に絞りこれをミニマムにする油性ミストからはじまった。

<油性ミストセミドライ加工>

①アルミ加工
 アルミはドライで300℃近辺の加工で刃先の局部的昇温部でアルミの溶着が起こります。これは構成刃先と言われこれにより加工表面の面粗さが増したりチップの欠けが生じたりします。セミドライ加工は加工部の潤滑性能が向上し構成刃先が生じなくなり工具寿命が延びる効果が得られます。セミドライ加工は当初はアルミの切断工程に多用されました。シャーリングによるビレット切断、チップソー(超硬丸鋸)によるアルミ鋳物やダイカスト鋳物の湯口切断、アルミサッシの切断等に使用されました。工具寿命が延び洗浄不要で職場の環境も大幅に改善され、コストダウンも得られました。

②金型加工
 1950年代半ばになると工具鋼が進化して高硬度材加工が可能になり、機械の剛性も一段と上げることで、焼入れ焼き戻しでHRc50程度の高硬度素材を鍛造金型素材として直に加工する高能率・高品位加工技術が金型産業に普及してこの加工にセミドライ加工が採用され工具寿命の向上、短納期対応やコストダウンに寄与しています。

③小径ドリル加工
 1mm以下のような極小径のドリル加工では折損し易いので切削速度を上げられませんが、高い潤滑性能が得られるセミドライ加工では容易に加工できます。この加工には細くて長い油穴付きツイストドリルを使用します。ミストを含んだ圧縮エアはドリル先端加工部で油穴が一部解放され、動粘性係数の大きなミストエアがウェット加工の到達できないドリル先端の微細隙間まで潤滑ミストを飛ばして潤滑します。またこの圧縮空気は切屑をドリル溝より排出するエネルギーとなります。また高圧エアの断熱膨張で切削部の冷却が起こり工具は冷却され、切屑も冷却されて排出性の良いコンパクトな切屑に切断され加工が進みます。

④ニヤネット部品
 油性ミストは潤滑性は良いのですが冷却性に劣るため、鍛造品でも加工部の少ないニヤネット部品の仕上げ加工に適用されています。

<水溶性ミストセミドライ加工>
セミドライ加工の潤滑性の良さは維持しつつ、油性ミストの問題点であった冷却能の課題を一気に取り払ったのが水溶性ミストによるセミドライ加工です。水溶性ミストによるセミドライ加工によりドリル加工は油性ミストの極細径Φ1からΦ5~Φ30へと広がり適用部品も大幅に拡大しています。

①水溶性ミストによりウェット加工以上の冷却熱伝達係数を達成することが可能です。したがって一般にウェット加工で使用される構造部材や部品用のSS材、SC材、SCM材、SUS材(SUS440を含む)等ほとんどの鉄鋼部材はもとより鋳鋼、鋳鉄(FC、FCD等)や難削材等が加工可能になります。変わったところではMCナイロンの加工もあります。

②水溶性ミストのセミドライ加工対象としては、洗浄を必要としないということで当初洗浄工程が大変な大型部品が対象となりました。つまり建設機械を構成する各種大型溶接構造物や大型鋳鋼、鋳鉄部品が対象となり、ドリル加工、ボーリング加工、チャンファリング加工、ミリング、リーマ仕上げ、タッピング加工等あらゆる加工が取り上げられてセミドライ加工されています。ドリル加工はΦ5~Φ30が使用されています。歯車加工はすくい面と逃げ面の隙間に上下方向から水溶性ミストによりセミドライ加工がされています。