セミドライ加工という発想が生まれた背景には、1990年代に入って世界中で高まってきた地球温暖化や環境汚染対応があります。これは戦後に産業界の大量生産が世界中で起こった結果として各国に大気汚染等の深刻な環境汚染がもたらされたため、各国がこれを抑え込むための国際会議を1990年前後から開催するようになりました。これを契機として世界中の企業が生産活動、社会活動における汚染物質の使用削減、省資源、省エネルギーを真剣に取り組む必要性を認識するようになり、それは現在に至るまで継続しています。
1997年CIRP(国際生産工学アカデミー)年報キーノートペーパー冒頭で社会から産業界への要求を、先端高機能材料、高生産性、高精度及び環境配慮ニーズの4点に集約しています。当時産業界の中心にいた機械産業には、高生産性と環境配慮ニーズが求められていたと言えます。機械加工には当時大量の切削油剤が使用されており、その寿命で生じる廃棄物による環境汚染や、油剤供給、循環等で機械電力の40%~60%が消費されていました。そこで徹底的に切削油を削減する加工法の研究がなされて開発されたのがセミドライ加工です。この「廃棄しない」経済システムを求める動きはその後今日でも続いています。