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切削油のメンテナンス方法

切削油剤には大きく分けて油性の不水溶性切削油剤と水による希釈を前提とする水溶性切削油剤の2種類があり、各々劣化モードは異なりますので、分けてメンテナンスを考える必要があります。

【不水溶性切削油剤のメンテナンス方法】

不水溶性切削油剤の劣化の原因としては他からの油混入(潤滑油、前工程油、ワークの防錆油)切りくず、混入水分、加工熱等があります。

他油
他油の混入は切削油剤に混入し均一になるので分離が困難ですが、使用と共に外観の色や粘度も変化し加工性能を低下させてしまうため最小限に抑えます。新油を手元に用意して粘度や色の変化を常時チェックする必要があります。

潤滑油は補給量の定期チェックなどでシール不具合等を最小限に抑えることが必要です。

切りくず
タンク底等に堆積した切りくずは切削油剤の酸化重合を促進させ劣化を早めます。また切削油剤に再混入して供給されると加工品質を低下させるので、チップコンベアやマグネットセパレーター等の浄化装置で除去が必要です。特に更液時にはタンク底、配管等に沈殿した切りくずやスラッジの清掃を十分に行うことが重要です。

水分
水分は加工物や装置の錆びや腐食のほか、油剤の寿命や加工性能の低下を起こします。前工程からの持ち込みや湿度等、気候の影響もあり、吸着剤や遠心分離や加熱等、物理的な除去方法等があります。

油剤量
切削油剤はワーク付着による持ち出しや、加工、循環時の飛散や切りくず付着等で減少していきます。油量の減少は油温の上昇を招き油剤の劣化促進や加工精度低下の原因となるので、定期的に新油の補充を行い装置の油量を一定に保つようにします。

【水溶性切削油剤のメンテナンス方法】
水溶性切削油剤の劣化の原因は、微生物、他油混入、切りくずがあります。水溶性切削油剤は水で希釈して使用することから使用液が劣化しやすいのでメンテナンスは重要です。

微生物
水溶性切削油剤は水で希釈して使用するので微生物が繁殖し液の腐敗が進行します。初夏(5月下旬)以降秋口(10月中旬)にかけて気温が上がると水温も上がり微生物が繁殖しやすい温度(20~40℃)になると増殖し異臭を放ちます。腐敗が進むと使用液の変色や分離、腐敗臭の発生、pH値の低下、防錆性の低下、加工性能の低下等多くのトラブルの原因になります。この微生物には空気(酸素)を好む好気性菌と空気(酸素)の無い所で繁殖する嫌気性菌があり、どちらも有機物等を餌として増殖します。タンク等で好気性菌が繁殖してタンク内に酸素が無くなると今度は嫌気性菌が繁殖を開始します。嫌気性菌は好気性菌より増殖速度が遅いのですが、卵の腐ったような強い臭気を発生しこれが臭気の元になります。微生物の発生を抑えるため油剤濃度、pH値の定期的、継続的な管理は欠かせません。

他油
不水溶性切削油剤と同様に水溶性切削油剤の他油混入は起こり、これらの他油は切削油剤と同様に微生物の餌となり腐敗が進み油分離、濃度低下の原因になります。また他油混入は切削油剤の濃度測定バラツキの原因にもなります。潤滑油の補給量チェック等、日常のメンテナンスが必要です。

切りくず
切りくずが油分を付着してスラッジとなってタンク底等に蓄積すると、それらを餌として微生物が繁殖を始めます。また切りくずは水溶性切削油剤の少ない油剤成分等を持ち出すことになり成分濃度が低下して防腐性能等も落ちるので、切りくずの定期的な回収・清掃および切削油剤の補給をおこないます。