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セミドライ加工の歴史

<セミドライ加工誕生の背景>
 セミドライ加工という発想が生まれた背景には、1990年代に入って世界中で高まってきた地球温暖化や環境汚染対応があります。これは戦後に産業界の大量生産が世界中で起こった結果として各国で大気汚染等の深刻な環境汚染をもたらしたため、各国がこれを抑え込むための国際会議が1990年前後から開催されるようになりました。それを契機として世界中の企業が生産活動、社会活動における汚染物質の使用削減、省資源、省エネルギーを真剣に取り組む必要性を認識するようになり、それは現在に至るまで継続しています。
1994~1996年ドイツでは環境問題から産学官のドライ・セミドライ加工の研究が行われこのころに日本でも産学で基礎研究が行われています。セミドライ加工は別名でMQL(Minimum Quantity lubrication)加工といいます。これは和製英語ですが我国の論文が国際会議で使用されるにつれ海外でも使用されるようになりました。米国等ではNDM(Near Dry Machining)加工ともいわれます。その60~70%が油性切削油剤であったとのデータが有り(主要国内切削油脂メーカー出荷統計資料)この切削油脂をミニマムにする油性ミストセミドライ加工の研究開発が開始されています。米国でもこの時期、機械の潤滑システム企業等でNDM加工として取り上げられて研究開発がなされています。

<セミドライ加工のその後の状況>
 環境規制は2000年のPRTR法の施行により更に厳しくなり、事業所からの環境規制物質の届出義務も加わり切削油剤使用は新たな局面に入ってきました。セミドライ加工は大量の切削油剤を使用しないという環境負荷軽減のツールとして各社で開発が行われていましたが、潤滑性能の高さは良いが絶対的な冷却性の不足は共通認識となったと言えます。そのため油性ミストのセミドライ加工は工具が折れやすく低速加工をせざるを得ない細径ドリル加工や、取り代が少なく発熱が少ない鍛造型のニアネット加工等に限られていました。しかし切削油剤の環境対応は待ったなしの状況で、この時期から油剤の使用量を大幅に減らす水溶性切削油剤の使用が市場で急増し油性の切削油剤(不水溶性切削油剤)の消費量が国内で逆転しています。CBN等耐熱工具の普及や高速切削ニーズの増大もこの動きを後押ししていたものと思われます。
セミドライ加工は冷却性の低さで適用が低迷していましたが、この水溶性切削油剤の急拡大に押されるように、冷却性能を大幅に改善した水溶性ミスト液のセミドライ加工が検討され開発されました。この水溶性セミドライ加工は特に大型構造物等の高速切削に有効であり、切削後の洗浄工程を省略できることや大型のスプラッシュガードが不要なことから工場では好評であり、建設機械各社等で採用が進みました。近年機械本体のセミドライ加工切屑対応や、専用工具の開発も進んでおり、車両部品等への実用化の展開が加速しつつあります。