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セミドライ加工装置の違いと利点 -ミストの生成-

セミドライ加工自体にはまだキチンとした定義は無く、多数の企業で適用化検討が行われています。2000年を過ぎてから一部の生産技術力の高い企業にてウェット加工からセミドライ加工化への代替が始まっているのが報告等から見て取れます。

セミドライ加工装置の機能と特徴を以下に説明します。

①ミストオイル潤滑
ミストを工具で加工する部分に掛ける方式自体はバンドソーや丸ノコ切断等で昔から使用されていました。ミストの生成方法には一般の霧吹きに使用されるベンチュリ―方式の減圧によりオイルを吸い出して油の微粒子からなるミストを発生させて給油管で給油部分に供給する方式です。機械の高速回転する軸やベアリング等の給油に使用される方式です。高圧エアでは安定したミストを生成しますが、圧力が下がるとミストオイルの安定供給に問題があると言われます。オイルの微粒子は給油配管で分配される途中で管壁に付着しやすい粒子は付着して油滴となるので、給油される際は付着し難いドライミスト化していると言われます。この潤滑では空気量、ミスト量の個別のコントロールは困難になります。

②オイルエア潤滑
 オイルエアは強い空気の流れにオイルが加えられて細分化され空気の流れる方向に運ばれていく原理で、そのまま空気により潤滑ポイントに運ばれて行きオイルが付着し潤滑に寄与すると言うイメージです。オイルの量は既定の量に設定でき、搬送する空気も噴射する仕様に応じて圧力や量をコントロールできるので加工方法や工具仕様に応じて対応できます。したがってセミドライ加工はこのオイルエア潤滑をベースに検討されています。
装置としては圧縮空気の圧力計と流量計の調整機構とミスト用油剤定量ポンプと圧力計と調整の機能が必要です。冷却能対応で水の配管と圧、流量調整を付加した装置もあります。

③ミスト粒の潤滑特性
 ミスト粒を含む空気流体と、切削油剤の連続流体が切削中に刃具の逃げ面と工作物の非常に狭い隙間(0.1mm程度)から切削工具刃先部を潤滑する場合、流体の違いによる潤滑挙動に差が生じます。ミスト噴流は空気とミスト粒の混流でミスト粒間は十分に離れているので流体力学ではKUNUDSEN流(クヌードセン流)と言われ、刃具の逃げ面の隙間ではクーラントより深くまで入っていくことができます。そこでクーラントより工具刃先近傍までミスト粒が届くので良好な潤滑効果が得られることになります。
またこのミスト粒は、逃げ面の狭い空間で気体が方向を急に変えても、ミスト粒は質量がありかつ速度が出ているのでエアがストップしても惰性で直進して落ちます。ミスト粒のサイズが大きくなると更に遠くまで進みます。粒径数μのミスト粒では精々数μしか飛べませんが、ミスト粒径10~100μでは気体が止まっても1mm位は更に中に侵入できるので有効に潤滑されることになります。
ただセミドライ加工はオイルの潤滑を優先的に開発が続けられましたが、適用をして行くにつれ、基本的に冷却能の低さが適用拡大の大きな障害になってきました。

④ミスト粒の冷却改善
 セミドライ加工は当初は油剤ミストによる潤滑機能を狙って適用を行っており、前述したようにうまく加工部の潤滑機能の向上には成功しました。細穴ドリル等の加工速度の低い工具刃先の発熱の小さい用途には有効に効果を発揮しました。しかし2000年代に入ると加工速度の向上は進み耐熱工具の開発も進み、加工部の高熱化に対応して冷却性の大きな水溶性切削油剤の出荷量が油性切削油剤を上回るようになりました。そこでセミドライ加工の潤滑性の良さは残し、欠点である冷却性能を改善した新技術『水溶性ミストによるセミドライ加工』が開発されています。油性ミストの代わりに水溶性ミスト原液を20~30倍に薄めた水溶性ミスト液を使用します。つまり水溶液切削油剤のミスト版ということで組成の95%が水のミスト粒を切削刃先部に供給します。水は比熱が油の倍であり油より熱を奪いやすく更に蒸発時に油には無い大きな気化熱(蒸発潜熱)を発熱部から奪うことができるのでミストの条件によっては水溶性のクーラントと同じレベルの冷却能(熱伝達係数)が得られます。その結果油性ミストでは不可能だった大径ドリル等のセミドライ加工も可能になりました。