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加工方法別 切削油剤の選び方

切削時の刃先部での発熱の原因や切削油の概略作用は前項までで理解されたかと思いますが、実際の現場には加工対象に応じた各加工法(旋盤、ミーリング、穴あけ、歯切りetc)と加工法に特徴的な工具が組み合わせられています。
刃先部の形状はどれも同じように見えますが、切削速度や送り等の切削条件や、刃先周りの空間や切削油の供給可能な環境はそれぞれ異なるため、実際は加工法や加工物ごとに刃先への負荷と切削油の供給環境、および求められる主要な切削油の作用を考慮して最終的な切削油の選定をすることになります。

以下に各加工方法の際に刃先が置かれている状況の理解と、それに適した切削油の選択について考えたいと思います。

◆旋削加工
加工物を旋回して刃物台を半固定状態で加工するのが旋削加工です。加工中は基本的に刃先と加工物は常に接触している連続切削という形態です。このように連続的に切削する場合は、刃先の温度は切削熱が加工中に蓄積していくことになるので、この加工熱が問題となる加工と言えます。
切削油は潤滑性を上げて摩擦熱を減らすことももちろん重要ですが、それ以上に近年は加工の高速高能率化が加速しており、冷却作用が重視されています。その結果、旋削での切削油の水溶性化が急速に進んでいます。
というのも、水の比熱は油の2倍であり、同じ容量の切削油で倍の熱量が吸収できますし、水の蒸発時に周囲から吸熱する力(蒸発潜熱)は非常に大きいので過熱した工具の刃先周りの冷却には最適で、油分の少ないソリュブル系の水溶性切削液(A2種)が使用されます。
ただ、旋削加工と言っても、要求精度の出しにくい加工品や断続切削になるような部品はどうしても低速加工となり、抗溶着作用を避ける意味でも、油分の多いエマルジョン系水溶性切削油(A1種)を使用するケースが多くなります。

◆フライス加工、エンドミル加工
旋削加工とは異なり、複数の切れ刃を持った工具を水車のように回転しながら加工物を切削していく加工法です。旋削加工は加工物が回転するのに対して、フライス加工では加工物は固定されていて工具側が回転して断続切削で連続切削する形になります。
旋削加工とは異なり刃先が連続切削せず、断続切削のため刃先が切削時の加熱と切削直後の切削油による急冷を繰り返し熱衝撃負荷(工具刃先部が急速加熱で伸び、直後に冷却で急速に縮むことの繰り返しによる工具刃先の熱応力負荷)を受けるために、水溶性切削油は油分の多い方がソフトに冷却されることと、加工時の工具への負荷を緩和する意味でもエマルジョン系水溶性切削油が使用される傾向が強いです。
ただ最近は、工具の耐熱衝撃性も高まってきているので、作業環境を考えると、可能であればソリュブル系を採用したい向きが多いと考えられます。その場合は部品形状にもよりますが、低速加工に強い潤滑性能の高いソリュブル系を試してみる価値は十分にあると思われます。

◆ドリル加工
これまでに述べてきた旋削加工やフライス加工、エンドミル加工は切削部が露出している状態でしたが、特に深穴のドリル加工の場合は加工点が深く、切削油を使用する空間が無いので冷却が非常に困難になります。
そのためいかに切削時の発熱を抑えるかが重要で切削油の高い潤滑性は不可欠です。また、いかに冷却性の高い冷却材を発熱部位の近くまで寄せられるかも重要になり、切削油の浸透性が鍵を握ります。
つまりドリル加工の切削油には、潤滑性と冷却性、浸透性が必要になりますので、潤滑性と冷却性を考えるとエマルジョン系ですが浸透性を考えるとソリュブル系も捨て難く、加工対象によっては潤滑性を重視したソリュブル系を試したいところです。
特に深穴の場合には、隙間が限られ切屑の排出が大変になるので、高圧クーラントを使用して浸透性と冷却性、更には切屑の排出を効率的にする方法も有効と考えられますが、水溶性のミストにより、少量の水で蒸発潜熱を有効に活用して狭隘な部位の冷却性と潤滑性を確保する試みも一つの選択肢かもしれません。